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「囚われの月」 [詩(うた)]

『囚われの月』


気がついたら ここにいたんだ
おもしろおかしく 杯を 交わして

それから
それから

ああそうだ
虫網にかかってしまったボクを見ると
みんな みんな 帰っていったんだ

夜が明けるときのように 
ひっそりと さり気なく

だから このカギを
開けに来る人は いない

ちいさく ちいさくなって
しまいには見えないくらいちいさな 石ころとなって
鉄カゴの底に 転がるだけだ


ボクが何をしたって いうのだろう
ナニモ シテイナイ ナニモ

ああ そうか

何もしなかった からなんだ

太陽がいないと 光ることもできない
遠くから 美しいと褒めてくれる人も
近づくと
そこに 住人のはずのウサギもいない
でこぼこミカン顔の ボクを見て

「なんだ ただの 石ころ だったんだ」
「光っていると 見えたのは まやかしか」


ああ

もっと星たちに 優しくしておけば よかった
一緒に すぐ近くにいたのに
かれらが 何を思っているかも 知らない


捕われたのは ボクのせい

もしかしたら 
カギなんか かかってないのかも 

それでも

出られない 出られない
出ようとすることさえ 億劫だ




気がついたら ここにいたんだ
どうしてかは うすうすわかってる

でも 認めたくない
認めたら
見なくてよかったものが
全部 ぜんぶ 
明るいところに 投げ出される

それなら いっそ
石コロと 笑われている方が ましだ

ボクだけ 我慢すれば いい

鉄カゴに入ったボクを 可哀相という人もいるけど
慣れると これほど楽な場所は ないようだ

ガンバって 光をたくさん浴びようとしたり
人との約束を 一つ残らず覚えていることも
星たちとの 距離を気にすることも

ぜんぶ 全部 要らなくなる

ただの 石コロになれば
こんな言い訳めいた 言葉さえ いらない

ただの 石コロになれば
ただの 石コロになれば  

//
mooncapchard.jpg
(2009年1月 フランス、パリ)



深礼//


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