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「昨日の、ヒール」 [詩(うた)]

今日の詩(うた)は、またまた、車窓の一コマから。



『昨日の、ヒール』


ポツンと三角形のものが ドア付近に いた

朝ラッシュで 電車とホームの溝に
8cmのヒールを 挟んでしまった 彼女

ぐいっと押されて やむなく ヒールの底だけ カポっ。。。

カバンを手から離さないようにするのがやっとで
異変に気づいたのは
改札を出て 会社に向かって大股で 歩き出したとき

「何か 今日は 体のバランスが おかしいや」
牛乳とマクビティのダイジェスティブビスケット死海の塩入り! を
ちゃーんと食べてきたのに


終着駅まで運ばれて
車掌さんにも見とがめられずに
ほんの万分の一 再会の望みをかけて
その ヒールの底 は 来た道を 旅している



会社のロッカーにある サンダルに履き替えた彼女は
昼休みに きっと 近くの ミスターミニットで
真新しい ヒールの底を身につけて
別の 明日を 行こうとしている

ランチデート中の 彼の不用意な一言に怒って
走ってレストランを後にした 時の
入社初のプレゼンで 上ずる声で震える両足を ふみしめた 時の
残業した終電で眠りこけ 自分の駅でドアがしまる瞬間 
人目をはばからずダイブして降りた 時の

あの時の 彼女を支えた ヒールの底が

ひとりぽつんと 
そこに いる

まるで 彼女の昨日が そこに 落ちているように


091110.jpg


// 

(2009年11月 東京)


色んなところに、色んな落しモノ
どこかもの哀しく、でも力強く。。。


深礼


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